« 科学技術振興機構(JST) | トップページ | 班別研修初日 »

2005年8月12日 (金)

「漁師が山に木を植える理由」

ryoushi本紹介: 「漁師が山に木を植える理由」

タイトル:「漁師が山に木を植える理由」
著者:松永勝彦/畠山重篤
発行者:木村隆夫
発行所:株式会社 成星出版


(1)漁師と学者の出会い
畠山重篤さんは牡蠣の養殖業を営んでいる。15年前にフランスのロワール川の上流の豊かな森をみて、「海を蘇らせるには、森の力が必要なのではないか」と直感したという。
松永勝彦教授は、函館で海洋の金属分布を調べていて、「石灰藻が拡大したのは、森からの腐食物質が流れてこなくなったのが原因ではないか」と気付いた。
気仙沼の漁師、畠山重篤さんと北海道大学水産学部の松永勝彦教授が出会い、日本中で30以上の地域で「漁民が山に木を植える運動」が広がっている。

(2)干潟は生命の宝庫
森林から栄養素が河川を通して運ばれるので、河口近くの海域では多くのプランクトンが増殖する。プランクトンは死後、砂泥に沈降しそれを餌としてバクテリアやゴカイなどが増殖する。それを食べる魚、貝、カニ、エビなどが生育し、それを食べる水鳥が来る。水鳥が糞をすれば魚の餌となったり、分解されれば窒素やリンとなり、プランクトンが増える。このように干潟は、物質循環がなりたっており、汚染物質を浄化する天然のフィルターの役目も果たしている。

(3)森から運ばれる海に必要な栄養素(フルボ酸鉄)
植物プランクトンや海草が光合成をするには、二酸化炭素と水と太陽の他に窒素(硝酸塩)、リン(リン酸塩)、ケイ素(ケイ酸塩)が必要であるが、これを取り込むには、先に鉄を取り込まなければならない。体内に取り込んだ硝酸塩を還元するための酵素に鉄が関与しているからである。
枯れ葉、枯れ枝が微生物によって分解され、鉱物と混合し、腐植土層が形成される。有機物質は腐食物質や有機酸を生成し鉱物を分解する。この生物的風化が森が海に果たす役割としていちばん重要である。
フルボ酸鉄は、プランクトンを増やす効果とともに、「海の砂漠化」の原因である石灰藻の拡大も防ぎ、海を豊かにするための二重の機能をもっている。

(4)英雄、牡蠣を好む
ナポレオンをはじめ英雄は牡蠣が好き。ロックフェラーは牡蠣の養殖場をもっていた。オイスター・アラ・ロックフェラーという名前の料理があるほどである。
フランス人の男性はドリンク剤なんか飲まないで、牡蠣を1ダースくらい食べてデートに行くというのが昔からの常識。縄文人は牡蠣を養殖していたと考えられる。現代っ子は精子の数が少ないのは環境ホルモンのせいだと言われているが、昔からセックス・ミネラルと言われている亜鉛の摂取量が減っているのが原因で、牡蠣にはその亜鉛が多く含まれている。
1個の牡蠣は1日に約200リットルの水を吸うと言われている。その水は川から流れ込む。したがって森が豊かかどうかが牡蠣に大きく影響するというわけである。

(5)人間の心に木を植える
畠山さんは「いい牡蠣をつくろう」「いい漁場をつくって次の世代に残したい」という思いから漁師仲間と上流の山に木を植えようと考えた。しかし、漁師だけが山に木を植えても、どうにもならない。森が豊かになっても田んぼで農薬をたくさん使われても、ダムで川が止められてもだめ。工場排水や生活排水をそのままどんどん流されてもだめ。「川の流域に住んでいる人間の気持ちが少しでも変わらなければだめ。」と思い、上流の小学校に行って、校長先生に頼んで、子どもたちに実際の海を見せたいと提案した。
海にやって来た子どもたちに、ホタテ貝の作業を手伝わせたり、海のプランクトンを採って顕微鏡で見せたりした。腐食土が海の生物を育てることや食物連鎖のことも説明した。海の生き物にとって都合の悪いものは生活排水や農薬や除草剤であることを話し、牡蠣やホタテ貝の味もたっぷりと味わってもらった。
その後、子どもたちから作文が届き、「朝シャンで使うシャンプーの量を半分にしました」とか、「給食後の歯磨き粉の量まで気にして歯をみがいている」と書いてあった。子どもたちからの作文が力になり、畠山さんたちの活動が継続された。
また、親や行政も農薬を減らしたり、環境保全型の農業への転換を進めるように少しずつ変わってきた。しかし、それでも効果が表れるまでに10年かかった。

(6)「森は海の恋人」運動は国語の教科書に
「森は海の恋人」というのは、畠山さんが歌人の熊谷龍子さんにお願いして作ってもらったフレーズである。「森は海の恋人」運動は中学三年の国語の教科書に取り上げられており、約3割の中学校が使っている。
平成12年改訂の小学校五年生の社会の教科書にもこの活動が詳しく載ることになっている。

|

« 科学技術振興機構(JST) | トップページ | 班別研修初日 »

コメント

トラックバックをさせて頂いた上、コメントまで頂戴し、感謝しております。プライベートホームページなども見させて頂いたのですが、何やら勉強しなくては行けないような事ばかりでした。早速、del.icio.usというソーシャルブックマークにもpostさせて頂きました。
今後、色々と読ませて頂きます。ありがとうございました。

投稿: kozo | 2006年3月15日 (水) 12時55分

kozoさん:
関です。こちらこそ、トラックバック&コメントをいただき、たいへんありがとうございました。
また、「そよ風」に来てください。

投稿: 関 幸一 | 2006年3月15日 (水) 13時10分

投稿: | 2013年2月17日 (日) 15時31分

attu

投稿: | 2020年10月 6日 (火) 09時10分

konnnituwannko

投稿: | 2020年10月 6日 (火) 09時11分

凄く役に立ちました 
ありがとうございます。

投稿: | 2020年10月 6日 (火) 09時12分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「漁師が山に木を植える理由」:

« 科学技術振興機構(JST) | トップページ | 班別研修初日 »