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2005年11月12日 (土)

岡本薫氏講演:「学力、ICTとマネージメントの課題」

nagano53全日本教育工学研究協議会(JAET) 長野大会
日時:2005年11月11日14:25~15:25
場所:長野県農協ビル(長野市)


nagano52講演テーマ:「学力(目標)、ICT(手段)とマネージメントの課題」
講師:岡本薫氏(文部科学省スポーツ・青少年局企画・体育課長)
講師略歴:元文部省学習情報課長で首相タスクフォース「教育の情報化」メンバーとして、「ミレニアム・プロジェクト『教育の情報化』」の企画にも関わられた方です。

○「自分たちがどうしたいか」が重要
「どう変わる日本の教育」という捉え方ではだめだ。「どう変える!日本の教育」というように自分たちがどうしたいかが重要である。

○選択と自己責任の時代
権限と税金を国から委譲されて、地方にとっては「選択と自己責任の時代」となってきている。
すなわち、「自由をいかに使いこなせるか」ということであり、ローカルスタンダードの時代の到来といえる。しかし、自由の活用にはマネージメントが必要であるが、日本は「マネージメントが苦手」である。

○教育の質を決める3つの要素
(1)カリキュラムの質
(2)教員の質
(3)スクールマネージメントの質

文部科学省には、カリキュラムと教員研修の担当課はあるが、「スクールマネージメント」を担当する課がない。

○企業のマネージャーを校長にするという動きについて
企業人を校長にするという動きがあるが、「スクールマネージメント」と「企業マネージメント」は違う。
「軍事マネージメント」とも違うが、戦争という事例から「スクールマネージメント」について学ぶことは多い。

○ノモハン事件に学ぶ
ノモハン事件(日本軍完敗:1939年5月11日、満州と外蒙との国境付近のノモハンで、外蒙軍と日本の関東軍・満州国軍が武力衝突を起こした。日本側が完敗し、9月15日、モスクワで休戦協定が成立した)の時、日本軍では、「適切に対処せよ!」という指令が出ていた。これは、当時から変わっていない日本の問題点を示している。

◎日本におけるマネージメントの課題
(1)「目的」と「手段」を明確に区別できない
「目的」と「手段」をはっきり区別することは、あらゆる議論やマネージメントにとって不可欠な「基本中の基本」であるが、日本人の多くはこのことが苦手である。
「目的と手段の混同」は、特に「手段として行われている活動」そのものに「価値がある」と思われているときに起こりがちであり、例えば、「パソコン・インターネットを使うこと自体が教育の世界において目的化する」ことも目的と手段の混同である。
(2)原因の特定ができない
子どもたちの「心の問題」に対応するために、「心の教育」の必要性が話題になるが、「心の問題」が起きている原因は「心の教育の不足」ではない。
こうしたアプローチのしかたは、外国の専門家からも、「水を溜めたタンクの水位が下がってしまっているときに、穴を探して塞ぐのではなく、上から水を注ぎ続けるようなもので、効果はあっても根本的な解決にはならない」と言われている。
(3)具体的「目標」の設定ができない
日本人はもともと「マネージメント」ということが苦手のようであるが、特に精神的な価値と結びついている「教育」というものについては、「目標・目的の設定」という基本的な部分で、既につまずいてしまっていることが多い。

◎政策マネージメントのプロセス
(1)現状の把握
政策マネージメントを行うプロセスの第一は、「現状」を正しく把握すること。
(2)原因の特定
「現状」は「理想」からほど遠い状態、「問題」をはらむ状態にある場合が多い。そうした「問題」をもたらした「原因」を除去することで「現状」を「理想状態」に近づけることができる。
そのためには、「原因の特定」が必要である。
(3)目標の設定
・「目標」は明確なものでなけらばならない。そして、「評価」ができる(すなわち、測定可能)なものでなければならない。
・目指すべき方向性について「対立」があるときに、そのどちらも否定できない上位概念でその対立を糊塗してはならない。すぐに対立が露呈するからである。
・「目標設定」とは「選択」である。「これを目指す」ということを決めると同時に、「あれは目指さない」ということも決めておく必要がある。
・「目標設定」とは「必要なこと」を実現するためのものであるが、「誰にとって必要なことか」をよく吟味・検討することが必要である。
(4)手段の開発・実施
「目標」を達成するための「手段」を考える必要がある。
「意識改革」は「手段」ではなく「結果」である。有効な「手段」を開発できない場合に、意識改革が手段とされることが多い。
(5)結果の評価(目標・結果の比較)
「評価」とは、単に「当初の目標」と「手段が実施された結果」を比較することである。
「数値化」とは限らず、評価には「定量的」なものだけではなく、「定性的」なものも含まれる。
日本では、「そもそも目標が正しかったのか」という評価委員の意見を「評価」にしてしまうことも多いようだが、これはマネージメントプロセスにおける「評価」ではない。

○「ルール」と「モラル」の混同
「著作権」は「ルール」であり「モラル」ではない。「他人が作ったコンテンツを無断でコピーしてはいけない」というのは、「赤信号では止まらなければいかない」というのと同じ「ルール」であり、思想・信条などとも関係した「相対的なもの」である「モラル」とは全く違うものである。

◎システム改革とマネージメント
自由と民主主義というのは「正しいものは存在しない」という前提から出発している。キリスト教徒もイスラム教徒もヒンズー教徒も住んでいるアメリカでは、「ブタを食べてよいか」「ウシを食べてよいか」などという「モラル」について話し合っても結論はでません。
これに対して、「同質性」への信仰がのこる日本では、「システムの改善」ではなく「心の問題」で解決しようとしがちである。マネージメントのプロセスをよく理解した上で、「システム改革」「教育改革」を進めていく必要がある。

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参考文献:
校長・教頭・教委職員・PTA関係者のための学校情報化のマネジメント
 岡本薫著 明治図書
教育議論を「かみ合わせる」ための35のカギ
 岡本薫著 明治図書

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